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ExcelからGoogleスプレッドシートへの移行チェックリスト

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ExcelからGoogleスプレッドシートへ移行するときのチェックポイントをまとめました。機能比較、関数の変換、VBAからGASへの移行方法、トレーニングのコツまで。

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ExcelからGoogleスプレッドシートへの移行チェックリスト

「本当にExcelの代わりになるの?」

長年Excelを使ってきた企業にとって、スプレッドシートへの移行は不安ですよね。

でも、実際に移行してみると「もっと早くやればよかった」という声が多いです。同時編集とか、自動保存とか、Excelにはない便利さがあります。

この記事では、移行時のチェックポイントを網羅的にまとめました。

こんな人向け

  • Excelファイルの管理に困っている
  • リモートワークでファイル共有が面倒
  • 複数人で同時に編集したい
  • クラウド化を進めたい

機能比較:できること・できないこと

スプレッドシートでできること

  • 基本的な表計算(SUM、VLOOKUP等)
  • リアルタイム同時編集(これがExcelとの最大の違い)
  • 自動バックアップ
  • どこからでもアクセス
  • GASによる自動化(VBA以上に強力)
  • APIやデータベースとの連携

スプレッドシートでできない(または制限がある)こと

  • VBAマクロ(GASで再実装が必要)
  • Power Pivotの高度な機能
  • 一部のグラフ種類
  • ActiveXコントロール
  • 1000万セル以上のファイル

移行を勧めるケース

条件理由
基本的な表計算が中心高度なマクロを使っていない
共同作業が多い同時編集の恩恵が大きい
リモートワークどこからでもアクセス可能
コスト削減したいOffice 365より安い

関数の互換性

そのまま使える関数

以下の関数は、ExcelとスプレッドシートでほぼSameな挙動をします。

数学: SUM, SUMIF, SUMIFS, AVERAGE, COUNT, COUNTA, COUNTIF, ROUND, MAX, MIN 論理: IF, AND, OR, NOT, IFERROR 検索: VLOOKUP, HLOOKUP, INDEX, MATCH 文字列: LEFT, RIGHT, MID, LEN, FIND, SUBSTITUTE, TRIM 日付: TODAY, NOW, DATE, YEAR, MONTH, DAY

変換が必要な関数

配列数式

Excel:

{=SUM(IF(A1:A10>100, B1:B10, 0))}
(Ctrl+Shift+Enterで確定)

スプレッドシート:

=ARRAYFORMULA(SUM(IF(A1:A10>100, B1:B10, 0)))
(普通のEnterで確定)

ARRAYFORMULAで囲むだけなので、むしろ簡単です。

スプレッドシート独自の便利関数

移行後に使えるようになる、スプレッドシートならではの関数です。

QUERY関数(SQLみたいにデータを抽出):

=QUERY(A1:D100, "SELECT A, B, SUM(D) WHERE C='営業部' GROUP BY A, B ORDER BY SUM(D) DESC")

ARRAYFORMULA(1つの数式で複数行に対応):

=ARRAYFORMULA(IF(A2:A100>0, B2:B100*C2:C100, 0))

IMPORTRANGE(他のスプレッドシートからデータ取得):

=IMPORTRANGE("スプレッドシートURL", "シート名!A1:D100")

FILTER(条件でデータ抽出):

=FILTER(A2:D100, C2:C100="営業部", D2:D100>1000000)

特にQUERY関数は便利です。ピボットテーブルより柔軟な集計ができます。

VBAからGASへの移行

基本パターン:セルの読み書き

Excel VBA:

Sub ReadWrite()
  Dim ws As Worksheet
  Set ws = Worksheets("Sheet1")
  value = ws.Range("A1").Value
  ws.Range("B1").Value = value * 2
End Sub

Google Apps Script:

function readWrite() {
  const sheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet().getSheetByName("Sheet1");
  const value = sheet.getRange("A1").getValue();
  sheet.getRange("B1").setValue(value * 2);
}

移行時のポイント

  1. 一括処理を心がける: getValues()/setValues()でまとめて処理した方が速い
  2. トリガーを活用: 時刻ベースのトリガーで自動実行できる
  3. 外部API連携: UrlFetchAppで簡単にAPI連携可能
  4. Gmail連携: Google Workspaceサービスと連携しやすい

データ移行の手順

ステップ1: 棚卸し

まず、移行対象のExcelファイルを整理します。

チェックリスト:

  • 全Excelファイルのリストアップ
  • 使用している関数のリスト
  • VBAマクロの有無
  • ファイルサイズ

難易度の判定:

  • 基本関数のみ → 簡単
  • 複雑な関数あり → 普通
  • VBAマクロあり → 難しい
  • 1000万セル超 → 難しい

ステップ2: アップロードと変換

方法1: Google ドライブにドラッグ&ドロップ → 右クリック → 「Googleスプレッドシートで開く」

方法2: スプレッドシートで「ファイル」→「インポート」→ Excelファイルを選択

ステップ3: 変換後の確認

チェックリスト:

  • 数式が正しく計算されているか
  • エラー(#REF!, #VALUE!)がないか
  • 書式が保持されているか
  • グラフが表示されているか
  • 全シートが変換されているか

よくあるエラー

#NAME?: 関数名が認識されない → スプレッドシート対応の関数名に変更

#REF!: 参照先が見つからない → 参照先を確認して修正

#VALUE!: データ型が不適切 → TODATE, TONUMBERなどで変換

チームトレーニング

カリキュラム(2時間)

Part 1: 基本操作(45分)

  • スプレッドシートの開き方
  • Excelとの違い(自動保存、リアルタイム共同編集、バージョン履歴)
  • 基本的な編集操作

Part 2: 共同作業(45分)

  • 共有とアクセス権
  • リアルタイム共同編集
  • コメント機能

Part 3: 便利機能(30分)

  • QUERY、ARRAYFORMULA、IMPORTRANGE
  • データ探索機能

トレーニング後のフォロー

  • 最初の1ヶ月はヘルプデスク設置
  • FAQをドキュメント化
  • 週1回、便利な使い方をメールで配信

移行後の活用Tips

Tip 1: 複数人同時編集

月次報告書を各部署が同時に入力 → 報告書作成時間が3日から半日に短縮。

Tip 2: IMPORTRANGEで複数ファイル統合

=IMPORTRANGE("東京支店のスプレッドシートURL", "売上!A1:D100")

ファイルを開いてコピペする手間がなくなります。

Tip 3: QUERY関数で高度な集計

=QUERY(A:D, "SELECT B, SUM(D) WHERE A='2025年' GROUP BY B ORDER BY SUM(D) DESC")

ピボットテーブルより柔軟です。

Tip 4: GASで自動化

毎週月曜日に週次レポートをメール送信:

function sendWeeklyReport() {
  const sheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet().getSheetByName("週次レポート");
  const pdfBlob = sheet.getAs('application/pdf');
  GmailApp.sendEmail("manager@example.com", "週次レポート", "今週のレポートです。", {attachments: [pdfBlob]});
}

よくあるトラブル

「数式が計算されない」

セルの書式が「書式なしテキスト」になっている → 「表示形式」→「数値」→「自動」に変更。

「ファイルが重い」

データ量が多すぎるか、不要な書式が多い → 不要な行・列を削除するか、ファイルを分割。

「IMPORTRANGEがエラー」

参照先へのアクセス権がない → 初回使用時に「アクセスを許可」をクリック。

まとめ:5つの成功ポイント

  1. 段階的に移行: 全部一度にやらない
  2. トレーニングをしっかり: 使いこなせるまでサポート
  3. 機能の違いを理解: Excelとの違いを明確に
  4. マクロは計画的に移行: VBAがある場合は入念な準備を
  5. 継続的に改善: 定期的に見直す

移行後の効果:

  • コラボレーション向上
  • コスト削減
  • リモートワーク対応
  • GASによる自動化

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